パーキンソン病は、アルツハイマー病に次いで頻度の高い進行性の神経変性疾患であり、
日本では約15~20万人の患者がいるとされ、60歳以上の100人に1人が罹患しているとされています。
多くが50歳以上で発症しますが、まれに若年で発症する方もおられます。
パーキンソン病の症状は、大別すると運動症状と非運動症状があります。
運動症状としては、安静時振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害の4つです。
安静時の震えやじっとしている時に手指が震える、筋肉が固くなりスムーズに動けず、素早く動けなくなります。
さらに歩き始めに足が踏み出せなくなり、バランスが取りにくく転倒しやすいなどがあります。
非運動症状としては、自律神経症状(便秘、頻尿、立ちくらみ、発汗、むくみなど)、認知機能障害、嗅覚障害、睡眠障害、精神症状(うつ、不安、幻覚、錯覚、妄想など)があります。
西洋医学の治療としては、脳内で情報を伝えるドーパミンを補充するL-ドパ製剤とドーパミン受容体作動薬を中心に症状に応じて複合的に処方されます。
私たちの体は、大脳皮質からの指令が筋肉に伝わることによって動いているのですが、
この大脳皮質の指令を調節し、体の動きをスムーズにしているのがドーパミンです。
パーキンソン病は、中脳の黒質にあるドーパミン神経細胞が壊れて、ドーパミンが減ることによって発症します。
なので、西洋医学の治療薬としては、ドーパミンを補充する薬を使うのです。
そういった西洋医学の治療薬ももちろん大事な薬になりますが、
ただ、欠点もあります。
それは、あくまで対症療法の薬であること、長く続けていると薬の効き目が短くなってくること、L-ドパ誘発性ジスキネジアなどの副作用があること等です。
パーキンソン病の原因は、
神経細胞へのα-シヌクレインの異常凝集が細胞死を引き起こしてドーパミンが減少することで発症・進行するとされています。
なので、そのα-シヌクレインの凝集を抑制することが根本的な治療につながると考えられています。
現在では、α-シヌクレインの凝集抑制作用を持つ物質の探索が世界中で進められています。
漢方薬に、α-シヌクレイン凝集を抑制する作用があるものが分かってきており、
その漢方薬によるパーキンソン病の予防や進行抑制の可能性に期待が膨らんでいます。
長期的に服用する必要性があること、値段が安くなりことが欠点かもしれませんが、
根本治療につながる可能性は広まっています。
(有野台薬品・漢方健康薬剤師 井上満弘)