私は大学を卒業してから5年ほどは処方せん調剤業務に携わっていました。
いわゆる、病院から処方された薬を調剤して患者さんにお渡しする薬剤師でした。
その時に痛烈に感じたことは、
「一人の患者さんにこんなにたくさんの薬を出してもいいのだろうか?
こんなにたくさんの薬を、長い間延々と飲み続けて大丈夫なのだろうか?」
ということでした。
血圧、コレステロール、糖尿、鎮痛剤、抗生物質・・・
たくさんの薬が処方されていましたが、
特に睡眠薬や向精神薬に関しては、こんなに何種類も続けて飲んでいいのだろうか?
と強く感じました。
向精神薬を何種類も長期間飲み続けている方は、どんどん人間らしさが失わていくように感じました。
そんな疑問を感じながらも、処方された通りに薬を渡さなければいけないことが嫌になり、
会社を辞めて実家の薬店を継いで、
今は漢方健康相談に取り組んでいるわけです。
先日、睡眠薬についての講義を受けてきましたので、今回は睡眠薬や向精神薬などについて書きたいと思います。
近年、国は医薬品の適正使用に向けて動き出し始めました。
医薬品の多剤併用を減らす動きだったり、以前も書いたように抗生物質の使用も減らす動きだったりです。
そして、睡眠薬や安定剤に関しても適正使用をめざして動き出しました。
2018年度診療報酬改定では、向精神薬の長期処方や多剤処方にメスが入ったのです。
今回は特にベンゾジアゼピン系という薬に対してです。
不安や不眠の症状に対し、12か月以上、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬・睡眠薬を長期処方している場合の処方料、処方箋料が低くなったのです。
要するに、ベンゾジアゼピン系の薬をずっと処方し続けていると、悪い言い方をするとお医者さんの儲けが少なくなってしまう制度にしたということです。
ベンソジアゼピン系の薬剤というのは、非常に依存性の強い薬剤ということで以前から問題になっていました。
デパス、アモバン、ソラナックス、ハルシオン、レンドルミン、セルシン、リーゼ・・・
などなどです。
以下に日本で承認されているベンソジアゼピン系の薬剤をまとめてみました。
<日本で承認されているベンゾジアゼピン受容体作動薬>
一般名 販売名
アルプラゾラム・・・ コンスタン、ソラナックス他
エスボピクロン・・・ ルネスタ
エスタゾラム・・・ ユーロジン 他
エチゾラム・・・ デパス 他
オキサゾラム・・・ セレナール
クアゼパム・・・ ドラール 他
クロキサゾラム・・・ セパゾン 他
クロチアゾラム・・・ リーゼ 他
クロラゼプ酸二カリウム・・・メンドン
クロルジアゼポキシド・・・ コントール
ジアゼパム・・・ セルシン、ホリゾン、ダイアップ 他
ゾピクロン・・・ アモバン 他
ゾルピデム酒石酸塩・・・ マイスリー 他
トリアゾラム・・・ ハルシオン 他
ニメタゾラム・・・ エリミン
ハロキサゾラム・・・ ソメリン
フルジアゼパム・・・ エリスパン
フルタゾラム・・・ コレミナール
フルトプラゼパム・・・ レスタス
フルニトラゼパム・・・ サイレース、ロヒプノール 他
フルラゼパム塩酸塩・・・ダルメート
ブロチゾラム・・・ レンドルミン 他
ブロマゼパム・・・ レキソタン 他
メキサゾラム・・・ メレックス
メダゼパム・・・ レスミット 他
リルマザホン塩酸塩水和物・・リスミー 他
ロフラゼプ酸エチル・・・ メイラックス 他
ロラゼパム・・・ ワイパックス 他
クロナゼパム・・・ リボトリール、ランドセン 他
ミダゾラム・・・ ミダフレッサ
ニトラゼパム・・・ ネルボン、ベンザリン 他
現在、日本の医療機関で使われる睡眠薬には、
このベンゾジアゼピン系と、非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体作動系、オレキシン受容体拮抗薬があります。
さらに、作用時間の長さ(効果の持続時間)により、次の①~④に分けられ、
患者さんの不眠症のタイプ(寝つきが悪い、夜中に目が覚めて眠れない、朝早く目が覚めるなど)に応じて
睡眠薬を使い分けます。
<睡眠薬の分類>
①超短時間作用型
ゾルピデム酒石酸塩・・・マイスリー
トリアゾラム・・・ ハルシオン
ゾピクロン・・・ アモバン
エスゾピクロン・・・ ルネスタ
②短時間作用型
エチゾラム・・・ デパス
ブロチゾラム・・・ レンドルミン
リルマザホン塩酸塩・・・ リスミー
ロルメタゼパム・・・ エバミール、ロラメット
③中間作用型
フルニトラゼパム・・・ ロヒプノール、サイレース
エスタゾラム・・・ ユーロジン
ニトラゼパム・・・ ベンザリン、ネルボン
④長時間作用型
クアゼパム・・・ ドラール
エスタゾラム・・・ ユーロジン
ニトラゼパム・・・ ベンザリン、ネルボン
●メラトニン受容体作動薬
ラメルテオン・・・ ロゼレム
●オレキシン受容体拮抗薬
スボレキサント・・・ ベルソムラ
日本では睡眠薬はものすごく使われていて、世界で2番目の市場なのだそうです。
日本人は、他の国に比べて、薬を使い過ぎです。薬漬けになってしまっています。
今、睡眠薬を長い間飲み続けている人が急に止めてしまうのは、
離脱症状が起こってしまう可能性があるのでお勧めしません。
徐々に減らしていくことになります。
これから睡眠薬を服用しようという人は頼りすぎないようにしてください。
やはり、脳に作用する薬ですから、ぼーっとしたり、ふらついたり、長期服用すると認知症にかかりやすくなるという可能性もあります。
眠れないということは確かにつらいことだと思いますが、
なるべく睡眠薬に頼らず改善いくべきだと思います。
生活習慣の改善が基本にはなりますが、当店ではなるべく自然な漢方やサプリなどをお勧めしています。
次回は眠りをよくするためのポイントについて書きます。
(有野台薬品 井上満弘)