毎年この時期になると、当店ではお屠蘇(とそ)をレジの横に置いているのですが、
「あっ、お屠蘇買っとかな」と買っていかれる方もいれば、
「これ、何? 何するもの?」と聞いてこられる方も結構おられます。
ある調査によると、20~69歳の男女のうち、全体の9割がお屠蘇を知っているとのことでしたが、
毎年飲む・飲んだことがある人は全体の4割だったそうです。
また、お屠蘇を飲む慣習の由来を知っている人はわずか2割だったそうです。
お屠蘇というのは、
正月三が日に1年の無病息災と健康を祈願して飲み交わす屠蘇酒に浸すための生薬のことで、
薬草独特の香り高い祝い酒として古来から飲用されているものです。
お屠蘇の中身は、白朮、山椒、桔梗、桂皮、防風、陳皮などの生薬で、れっきとした漢方薬なのです。
中国生まれの日本育ちのもので、
諸説ありますが、もともとは中国三国時代(約1700年前)に中国の名医・華佗(かだ)によって作られたと言われています。
日本では、平安時代に嵯峨天皇に献上されて以来、天皇が元旦からお神酒に浸して用いたのが始まりと言われています。
そして、江戸時代に庶民によって育てられ、現在も年中行事のひとつとして残されています。
江戸時代、医師への治療費は薬札と称し盆と暮に支払うことになっていたそうで、
暮に支払うと「来年も元気でいろよ」と領収書代わりに屠蘇が渡されていたそうです。
患者は翌年の健康のため暮の薬札を支払い、屠蘇で新年を迎えていたのです。
お屠蘇の風習は新年の大事な行事で、
「一人これを呑めば一家病無く、一家これを呑めば一里病無し」と言われていて、
「一年の邪気を屠(ほふ)り、魂を蘇らせる。」
病を避け、長寿延命や無病息災を願うのです。
日本に伝わり、飲み継がれてきたお屠蘇。
代々引き継いでいきたいものですね(^^)
(有野台薬品・漢方健康薬剤師 井上満弘)